半澤鶴子(はんざわつるこ)さんの、「女ひとり 70歳の茶事行脚」という番組がNHKで放送されます。
この「女ひとり 70歳の茶事行脚」という番組は、おもてなしの原点と言われる「茶事」に人生をかけ、全国行脚を決意した半澤鶴子(はんざわつるこ)さんが鍋釜と茶道具をバンに積み、着物姿で車を運転し、全国各地で出あった初対面の人々に、その土地の食材を使った料理とお茶をふるまう2年に密着した番組です。
もう何度も再放送されているのですが、美しい作法や景色はなんど見ても飽きないことと、見るたびに違った感動を貰えます。
目 次
「女ひとり 70歳の茶事行脚」について
半澤鶴子さんは、日本で数少ない茶事の出張料理人です。
「茶事」とは、千利休が確立した4時間ほどのお茶会で、懐石から始まり酒を振るまい、最後にお茶でもてす4時間ほどの茶会のこと。
「女ひとり 70歳の茶事行脚」という番組では、半澤鶴子さんが70歳を機に茶事の神髄を極めるために、鍋釜と茶道具をバンに積み込み、着物姿で車を運転。
そして、全国各地で出あった初対面の人々に、その土地の食材を使ったお料理とお茶をふるまった2年に渡る旅に密着したドキュメンタリ番組ですが、半澤鶴子さんと共に映し出される景色がとても美しいのです。
一見、ちょっと不釣り合いとも思える海辺での茶事があまりにもしっくりしていることが不思議でした。
ところがこれは、あとの半澤鶴子さんの経歴とも関係あることにきがつきました。
半澤さんは、自然や食材との出会いも「一期一会」だとおっしゃりそれをとても大切になさっています。
「猫柳が本当に美しいタイミングなんて、本当にわずか1週間ぐらいのものよ」。
そしてまた、以下のようにも語っていらっしゃいました。
「季節に素直に、足元にあるものを使って…。 出向料理に行く時も、材料の問い合わせがあるのですが、特別な材料は要らないの。 寄ってきたものを、そこにあるものを…。 そして、材料とのご縁を大事にして料理させて頂くのです。」
半澤鶴子(はんざわ つるこ)さんプロフィールと経歴
- 名前:半澤鶴子(はんざわつるこ)
- 生年月日:昭和18年(1943年)
- 生まれ:満州(満鉄病院)
- 育ち:広島
半澤さんの人生を、歴史と照らし合わせて見ると、時代背景と共に生き様について深く知ることができます。
半澤鶴子さんが生まれて、2年後に終戦。
満州国の消滅とともに、母親の実家がある広島に引き上げてきたそうです。
そして、時期はわからないのですが、幼少期に両親を亡くされているとの記述もありますが、両親の離婚により、瀬戸内海の島にある父方の親戚へ預けられ、中学まで広島の養父母のもとで暮らしていらっしゃいます。
番組内で、海の男(漁師)に茶事を振る舞うシーンがあります。
茶事と漁師さんて、とても不釣り合いな感じがするのですが、映し出される光景がとっても美しくてしっくりしていたのです。
これはきっと、半澤さんが瀬戸内海で、沢山の漁師さん達の中で育ってきたからだろうな、とあとからこうやって気がつくのでした。
時代背景や半澤さんの辿ってきた足跡を確認していくと、改めて半澤鶴子さん自身とドキュメンタリーで映し出される影像の本質に触れることができるような気がします。
養父母のもとで暮らしはじめてしばらくすると、養父が亡くなって、養母と共に上京して暮らし始めますが、養母が再婚。
居場所が無くなった半澤鶴子さんは中学校を卒業後すぐに、駅ビルではたらいて自活を始めました。
そこで出会った、同じビルの時計店で働く青年と結婚して鎌倉に転居。
お二人の子供さんに恵まれます。
結婚後に、子育てをしながら通信制の湘南高校を卒業し、同時に幼稚園の保母免許・調理師免許を取得。
30才まで、鎌倉私立富士愛育園に勤務。
その期間の毎日の睡眠時間は3時間程度で、体が続くはずはありません。
胃潰瘍を患っために幼稚園を辞めて、家族とともに引っ越し。
千葉県東金市への転居を機に、調理師免許を活かして料理の道を極めていこうと、2時間かけて料理講師養成所にて研修を受け、その後、付属の料理講師として10年所属(30~40才迄)。
この期間中も、短歌の勉強や、日本料理の研究会に参加するなど熱心に学んでいかれるのですが、中学生と高校生の子供さんのいる家庭の主婦としての家事も有り、往復4時間かけての通勤で再びダウンしてしまいます。
このときは、目が見えなくなってしまったのだそうです。
光が目に入ると、ひどい吐き気に見舞われ、料理教室を3ヶ月休んで様子を見るのですが好転せず、完全に体調が改善しないまま復職。
助手の手を借りながら、吐き気と戦いながら講師を続けていたそうです。
茶事との出会い
料理教室で教える、決められた料理を決められた段取りで教えるだけなら料理本でもいいのでは?と疑問を持ち始めていた半澤さんに転機が訪れたのは、短歌の会の仲間からの新築の棟上げ式の料理の依頼でした。
任されたのは、三段重で60人分のお料理です。
同じお料理でも、手順通りの料理教室とは全く違って、広いお屋敷内の季節の素材を活かしてお重の中身を考える作業は、半澤さんにとって、物凄く楽しい作業だったそうです。
このことがきっかけで、一から十まで自分で考えて創り上げるお料理を提供すること、そして食べた人を楽しませ、喜ばせるお料理をつくりたいとおもうようになっていったそうです。
そこで、料理教室をやめて、料理研究会で知り合った方のお店の厨房で働くことにしました。
この方が、実は茶事の会長もなさっていて、ここで半澤さんは茶事と出会うのです。
また、厨房で働きながら、出張料理人になるべく自動車の免許を取得。
たったの2周間で免許を手にした半澤さんは、交付されたその日に、車を運転して食材を調達しにいったそうです。
2周間で免許が取れる時代があったのか、とおもいつつ、当時は車の量も多くなかったはずで、運転もしやすかったのかもしれませんね。
自動車教習所での出会いもまた、半澤さんの人生を変えた大きなきっかけの1つでした。
一緒に受講していた方に青磁の販売業者さんがいて、その方から「茶事ができる人は本当に少ない」と教えられ、勧められ、茶事に関する大量の本を読み漁り、次第にその世界に惹かれていきます。
この時すでに出張料理人として活動なさっていたのですが、同時に茶事懐石の教室にも5年間通って勉強していました。
鶴の茶寮開設
料理教室をやめてから10年後。
半澤鶴子さんは、自宅にしつらえた茶室に「鶴の茶寮」を開設。
茶事で使う野菜は、畑を借りて育てています。
*日本料理研究会特別会員
*茶事懐石に精通した料理人として、全国の名家の慶事などに出向く。
*現在は、茶事の出張料理、全国展開中(主に北陸、関西方面)
幼い頃、瀬戸内に育ったせいか、常に海と山のある所を求めて住んできたそうで、葉山、逗子、鎌倉と宿借りのように移り住んで、とうとう最後は男の海とも云える九十九里に住んでみたくなったそうです。
幼少時に暮らした場所って、年を取ればとるほどそこに戻りたい気持ちが湧いてきます。
楽しい思い出ばかりじゃなかったとしても、戻りたくなる気持ちってどこから湧いてくるのでしょう。
鶴の茶寮(つるのさりょう)
教室の場所他詳細
現在の半澤鶴子さん主宰の『鶴の茶寮(つるのさりょう)』は、2つの教室があります。
それぞれの教室で、日にちや内容違いで茶事がおこなわれています。
東金教室
- 千葉県東金市田間2-1-18
京都教室
- 住所:千葉県東金市押堀676-9
- TEL・FAX:0475-54-2518
茶事
茶事は、毎月第2日曜日・月曜日に行われていて、月によってテーマが異なります。
ただ、継続会員が優先になているようですから、一般参加の場合は早めにお問い合わせ、お申込みをされていたほうがよさそうです。
参加費
- 一般参加:12,000円
- 継続会員:10,000円
詳細は⇒ 鶴の茶寮(つるのさりょう)
お食事・各種実習・講習会・イベント
以前は、本格的な茶事とは別に、参加しやすい会がいくつもあったのですが、2017年4月現在は、茶事のみになっているようです。
日本料理の会:5,000円
お茶事の料理実習とは別で本格的に日本料理を勉強・体験したい方のための講習会で、薬膳の特色を持たせた、季節ならでは日本料理献立での実習。
和菓子つくり講習会:3,000円 *通常毎月第2木曜日
季節を先取りし、ひと月先のお菓子(和菓子)を作ります。
出来上がりはお抹茶一服と共にご賞味。お土産有り。
男子厨房の会:5,000円 *通常第2火曜日
チャレンジ!男の手料理
試食の後は抹茶を一服で楽しいひと時をすごします。
手作り工房の会:3,000円 *通常第2金曜日
季節の身近な食材で、ちょっとした一品をつくります。
詳細は⇒ 鶴の茶寮(つるのさりょう)
半澤鶴子さんの書籍とDVDについて
半澤鶴子さんの書籍とDVDは一般書店やアマゾンでの取扱はありません。
申込先は、半澤鶴子さんのオフィシャルサイトからになります。
口コミ・感想
番組を見ての私の率直な感想は、予告動画での静のイメージを一転させる動的なものでした。
しとやかさ、しなやかさの中にある美しさは、迷いなく自分に正直に突き進んでいく強さの表れでもあるんだな、と自分の生きざまと照らしあわせて改めて考えさせられてしまいます。
番組を見た方の感想をツイッターから集めてみました。
半澤鶴子さん。凄いな…。
あ〜ちょっとガツーンときたな…。
最近荒んだニュースや人の憎悪とか殺意とかそんなんばかり見てたような気がするから、ほんとガツーンときたな。
どこでもどんな場所でも茶事でもてなせるのか〜。#ETV特集 pic.twitter.com/8CUgAsBh4m— オタヒデ (@hiduuukey556) 2016年7月9日
半澤鶴子「女ひとり70歳の茶事 行脚」再放送を見る。「花一輪に飼い慣らされる」ですか。素晴らしい。花一輪は質素であっても全力で咲く。花一輪になりきってではなく、その花一輪に飼い慣らされる立場に己を置く、そこに「ご馳走」の根底が出来する。
— 山内志朗 (@yamauchishiro) 2017年1月2日
NHKで半澤鶴子さんのドキュメンタリーを観たよ。素晴らしく上品なおばあちゃん。どうやったらあんなに美しく上品に年を取れるのか……。茶事の出張料理人って初めて知った……。きっと、人生の酸い甘いを知り尽くした上での上品さなんだろうなぁ……
— kern358 (@kern358) 2017年1月1日
Eテレの半澤鶴子さん見てた。感動… この人に会いたいなぁ。いつか茶事を受けたい。 ETV特集 - NHK https://t.co/glQxeHuHXo
— 珈琲ぽん (@coffee_pon) 2017年1月1日
半澤鶴子さんの茶時行脚を見て心を鎮める。
— こめたろう (@kometaro2016) 2017年1月1日
旦那さんとのエピソード
生活感を全く感じさせない半澤鶴子さんですが、ご主人からしっかりと愛されてサポートされていらっしゃいます。
過労でダウンして、目が見えなくなってしまった時、楽しみがないだろうと、100万円もかけてステレオを手作りしてくださったのだそうです。
時計屋さんで働いていらしたご主人なので、機械には強かったのかもしれませんね。
私の時代は、普通科なのですが、男子は授業で確かラジオを作っていたような記憶もあります。
また同じ時、家のことならできるから「仕事を辞める」といった時にも、「後悔しないようにしたら」といってくれたのだそうです。
この言葉を聞いて、どれだけ安心なさったことでしょうね。
そして、この言葉がきっかけで再度「目が見えなくなっても好きなことをしよう」と決心できたのだそうです。
まとめ
何度も再放送されている半澤鶴子さんの「女ひとり 70歳の茶事行脚」ですが、見るたびに見方が変わります。
変わらないのは、半澤さんのステキさと、映し出される影像の美しさだけかな。
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