折元立身(おりもとたつみ)さんは、20年間うつ病でアルツハイマー病の母、男代(おだい)さんを介護しながら次々とアート作品を創出してきた現代美術家です。
病によって変わっていく母に絶望し、出口を見失っていた毎日を、「母との日常こそアートである」と、発想を転換させ、介護のある日常をアートに昇華させてきた折元立さんですが、この春に最愛の母を98歳で亡くし、喪失感から何も生み出せず、家に閉じこもるようになったそうです。
そんな折元立身(たつみ)さんが7月31日のハートネットの主人公です。
ここではそんな、現代美術家の折元立身(たつみ)さんについて、プロフィールや「アート・ママ」や「パン人間」といった作品についてまとめています。
折元立身さんプロフィール
- 1946年神奈川県生まれ。
- 1969年に渡米、カリフォルニア・インスティテュート・オブ・アートで学ぶ。
- 1971年にニューヨークに移って、ナム・ジュン・パイクとフルクサス・グループに出会い、パフォーマンスを開始。
- 1977年に帰国して以後は、国内及び世界各国で精力的に制作活動をつづけていらっしゃいます。
母の男代さんは1919年に、埼玉・秩父の農家に生まれ、12歳で、東京・池袋の商家に子守奉公に出て、20歳前後で福岡・筑豊出身の父と写真見合いで結婚したそうです。
そして、折元立身さんは、戦後間もない46年、鉄骨会社に勤める父と母・男代さんの間に川崎市で3人兄弟の次男として誕生。
4畳半一間に一家5人で暮らすほど貧しかったそうです。
父は仕事は真面目だったけど、遊び好きで、競馬場や競輪場に連れて行かれた記憶しかなく、苦しい家計を支えるために、一生懸命に働く母の姿を幼心にはっきりと覚えているとか。
そうはいっても、生活に明るい彩りを添えてくれたのも母で、カラフルなセーターを息子たちに着せ、中学生の時には人形浄瑠璃に連れて行ってくれたりもしたそうです。
高校生になった立身さんは、東京芸大への進学を目指しますが、家で描いていると、「油絵の具が臭い」と父は渋い顔をして怒るのに対し、貧しいながらに「思う存分に描きなさい」と母は近所に小さい部屋を借りてくれたそうです。
また立身さんはッハに対して、以下のようにも語っていらっしゃいます。
「お袋は文化に理解があるんだ。チャイニーズ・レッド(黄赤色)のセーターを編んでくれたりして、センスも良かった。俺のドローイングに赤い色が多いのは、その記憶のせいかもしれない」
こういった、お母様を思う深い愛情のようなものが。介護作品「アート・ママ」のなかには沢山散りばめられていますよね。
1969年に、7回も受験に失敗した東京芸大を諦めて、兄を頼って渡米。
渡航費、銀座の貸し画廊で絵を売って工面し、現地の生活費は皿洗いのアルバイトなどで稼いだそうです。
そして当時、このアメリカを中心に広がりを見せていた前衛芸術運動「フルクサス」のメンバーが街中やスタジオを舞台にパフォーマンスなどを行う「イベント」を目の当たりにします。
このことがきっかけとなりで、日常にアートを持ち込む手法にがとりいれられるようになりました。
折元立身さんの最近の作品「アート・ママ」は、母を題材にした写真がメインになっていて、日本では折元立身さん自身はあまり知られていませんが、渡米してアートをガッツリ学んでいらっしゃるだけあって、クロッキーなんかはsラリと描いてあるのですがとっても綺麗です。
また、外国では知名度も評価も高く、世界各国の展覧会やパフォーマンス・アート・フェスティバルに招聘されて、国際的に活躍していらっしゃいます。
2000年頃は、ドイツを中心としたヨーロッパでの発表が多かったようです。
国内では、2000年に東京の原美術館で国内初の本格的な個展を開催。
また翌年、2001年はベニス・ビエンナーレ、アペルト部門、及び横浜トリエンナーレにも出品されています。
昨年2016年にはフランスで作品集を出版し、8月にはデンマークでアートイベントに参加していらっしゃいます。
その少し前2016年7月11日に行われた地元の川崎市市民ミュージアムで行われた参加型のパフォーマンス「車いすのストレス」の画像がこちら。
なんだかハチャメチャな感もしますが、楽しそうですね!
折元立身さんの作品
アートママ
『アート・ママ+息子』 2008年
こちらは、折元立身さんの代表的な「アートママ」の中でもよく目にする写真です。
なんだか、ちょっと困ったようなお母様のお顔が特に印象的です。
今から10年位前の、まだまだお母様がお元気な頃の写真になりますね。
https://www.cinra.net/news/gallery/92072/7
『スモール・ママ+ビッグシューズ』 1997年
こちらはさらにその10年位前の、お母様がもっとお元気な時。
折元立身さんのアート・ママの中で一番好きな写真です。
注目すべきは、お母様の足元!
折元立身さんが、介護の途中にお母さまから聞いた昔話から発想されたもので、お母様は身長130センチと、物凄く小柄だったそうです。
そしてその言葉とは、
「背が小さく、学校の朝礼で背の順に並ぶといつも一番前。貧しくて破れた靴を見られるのが悲しかった」
というもの。
少しでも勇気づけようと、ダンボールで靴を作って履いてもらったようです。
作品としてだけのものだとは思うのですが、何センチあるんでしょう?
まさかこの靴でお買い物なんかは行けませんよね~。
健康な人でさえ、3歩も歩けば転びそうです(笑)。
でも、視点が10cmあがるだけでも見える世界って随分違ってくるんですよね。
お母様がとっても堂々としていらっしゃいます。
『ベートーベン・ママ』 2012年
このベートベンっていうのは折元立身さんご自身のことでしょうか?
髪型や表情がペートーベンっぽいです。
「パン人間」
この「パン人間」というパフォーマンスも折元立身さんの代表作なんですが、この良さはちょっとわからないんですよね。
『パン人間』サンパウロ ブラジル(サンパウロ・ビエンナーレ)1991年
『パン人間の息子+アルツハイマー・ママ』 1996年
アニマル・アート
こちらは、ドローイング。こういった描写って大好きで、これが具現化した写真が下にあるんですがちょっと笑えます。
『子ブタを背負う01』2012年
『子ブタを背負う02』 2012年
『子ブタを背負う03』 2012年
上記のドローイングでは、子ブタにやり込められているように見えるのですが、現実はこんなにおとなしい(笑)。
というか、背中で揺られてとっても気持ちよさそうで、スースーという寝息が伝わってきそうです。
『ウサギ+クラッカー+立身』 2015年
こんなかわいいうさぎさんのドローイングもありました!
このうさぎさんは、ドワーフ種という小柄なタイプのウサギさんだと思われます・サイズの小さい子になると大人でも800gくらいしかないの小型種なんですが、正面から見た顔はこのまんまです。
お腹のあたりから飛び出したようにみえる白髪っぽい毛も勝りリアル!
大好きな作品です。
そして続くはこんなアート作品が生み出されているアトリエスタジオ。
かなりユニークです。
『オリモト・スタジオ(アート+ライフ)』 2011年
こちらはアトリエなのか、この居室自体がアート作品なのかちょっとわからないのですが、こんなユニークな写真もありました!
スタジオと言うタイトルになっているので、ご自宅の一室にあるアトリエなんでしょうけどね。
折元立身さんの書籍
こちらの書籍は、2003年にNHKテレビ「にんげんドキュメント」で折元立身さんが、放送された内容がまとめられたものです。
アマゾンのレビューによると、やはり読者の方も『スモール・ママ+ビッグシューズ』が印象的だったようです。
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自らの私生活をアートとして公開する作家は複数いると思いますが、これほど現代社会の現実に接近する例は珍しいと思います。母親の介護を含む私生活から得た着想をそのままアートにするというアイデアが斬新です。巨大な靴の作品も「低身長で貧しくていつも穴の空いた靴を履いていた母に立派な靴を履かせたい」というところからアイデアを得たそうです。作品の値打ちは母親のキャラクターに依拠するところも非常に大きいようで、そのあたりも興味深いです。
引用:アマゾンレビュー
まとめ
ここでは、現代美術家の折元立身(おりもとたつみ)さんについて、プロフィールや最愛の母を題材にした作品「アートママ」ほか、私が気になった作品をピックアップしてみました。
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